「パパ活」――その言葉が持つ響きは、若さとお金、そして複雑なる人間関係が交差する世界を想像させる。
現代社会において、普通の女性と愛人関係になることやプロの女性ではない素人と呼ばれる普通の女の子と意思疎通を取り時には深い関係を持つ事が出来る、という夢のような現実は一部の人々にとってはこれ以上にない誘惑ともなり、
また切実なニーズの解消ともなる新たなる関係性の形態と言っても過言ではない。
しかし、その裏に隠されたリスクや複雑さもまた、我々に問いかけている。その闇の深層に迫ることは容易ではない。
経験した者のみが知る事になる、夢が地獄に転ずる一瞬の苦行。一例を説明しよう。
パパ活ではポピュラーではないが車内での待ち合わせ。
彼はメッセージで取り付けた相手との待ち合わせを心待ちにしていた。
メッセージのやり取りでお互いが納得の上取り付けた大人2。彼は嬉々として深い関係に進むための2万円を用意していた。
彼は既婚者で小さい子供がいる為、なかなか自分の時間を作ることは出来ない。
仕事でも責任ある立場を与えられており、充分な給与を貰っている身でありながら誰よりも勤勉に働く男であった。
彼は時折こう自虐した。
「俺、社畜だから時間がなかなか取れないのよ」
そういう背景もあり、彼は当初顔合わせというよりは当日から発展出来る相手を求めていた。
ライフスタイルに合わせた交際方法ともいえるかもしれない。
だが今回はそのライフスタイルに合わせた活動方法に足元を掬われたと言っても良いかもしれない。
最初、取り分け第一印象はとても大切だ。次も会いたいと思えるか、思って貰えるかの判断はまずはファーストデートで決まるからだ。
緊張しながら高鳴る鼓動と共に彼女の到来を待つ。
しかし、待ち合わせた女性は、事前に送られた写真とは似ても似つかぬ姿で現れる。
「こんなはずでは」「ミスった」「僕はこの女性とやり取りをしていたのか」
色々な感情が一瞬で頭の中を駆けめぐり、彼の心はざわめく。カイジ並にざわざわ音が体内を流れ続ける。
「ちょっと印象が少し違うので今日は顔合わせが出来たということで、10,000円お渡しいたしますので今日は解散しませんか」
深い関係で2で納得していたのだから何もせずに解散で半額の1万円となれば割が悪くはない。納得してくれるだろう。彼はそう思った。
だが彼女の口から出た言葉は違ったのだ。
彼女は
「自分が車内に入り助手席に座った時点で金銭が発生しているので、貴方は私に2万円を払う義務がある」という謎めいたルールを押し付ける。
「え」彼は戸惑い、それでもなお解散しようと説得をしようとこういった。
「でも、写真の女性だから会いたいと思ってお声が消させて頂いたのに、実物とは全く印象の違う女性が来て「ルールだからもらうものは貰って帰る」というスタンスであれば、逆の立場ならどうですか?」
しかし、彼女は逞しかった。
「知らないですし、大丈夫です」とさらに一歩踏み出し、写真を撮ることで彼を脅し始める。
彼は身動きが取れず、彼女の言葉に従うしかなかった。
彼は納得できなかった。しかし、家庭を持つ彼の立場。
下手に表に出されては困る。彼はしぶしぶ2万円を手渡し、ただ消えていく彼女を見送る。
このエピソードは、パパ活という世界の暗い側面を浮き彫りにする。
金銭と信頼、そして彼女の言葉による恐怖。その場にいた者にとって、それは一生消えることのない傷跡となるかもしれない。
しかし、それでもまた、新たなる課題に立ち向かう覚悟を促すものである。
せきゆな
詐欺なし